パラレルストーリー 2話(伊藤香織)
「いらっしゃいませ」
明るい店舗で接客をしている。
化粧品会社に務める伊藤香織(いとうかおり)は今年で25歳。そろそろ結婚を考えている。
時間は17:30を回っていた。
「お先失礼します」
香織は、仕事が終わるとすぐに会社を後にした。
今日は大学の同級生と食事会があるのだ。
つまりいうところの合コンである。
半年前に彼氏と別れてから男っ気がない。
社会人になってからは出会いがないため、大学の友達から誘いが来た時は、迷いなくOKした。
「香織! こっち!」
店に着くと友達の美穂が呼んでいた。
美穂とは大学で一番の親友だった。
男性陣はすでに到着していた。
明るく笑顔が素敵な男性と、顔は悪くないが物静かな男性、今日はこの4人で集まったのだ。
「では、自己紹介からね! 私は幹事の美穂です! 彼氏はもちろんいません! 今日はよろしくお願いしまーす!」
美穂は学生時代から明るく、男ウケがいい。
彼氏が途切れることはなかった。
「私は香織です。美穂とは大学の同級生です。今日はよろしくお願いします」
私は昔から人見知りで、自分からは男の人には話しかけられなかった。
前の彼氏は社交的な人ですぐに惹かれた。
告白され付き合ったが、1年付き合うと彼氏が浮気をし、別れを切り出した。
それからは社交的な男の人には警戒をするようになってしまった。
多分昔の私なら今日の明るい彼にはすぐに惹かれていただろう。
持つ一人の物静かな男性、人見知りなのか、あまり話をしない。
システムエンジニアをしているらしい。
どんな仕事なんだろう。
食事会は明るい彼と美穂のおかげで盛り上がって終了した。
3日後、見知らぬアドレスからメールがきた。
食事会の物静かな男性だった。
美穂からアドレスを聞いたらしい。美穂はおしゃべりだ。
「今度の土曜日、食事でも行きませんか?」
人見知りの彼から誘いがあるとは、まったく予想外だった。
嫌いなタイプではなかったので、翌日、オッケーの返事をした。
どんな人かあまり分からなかったのでちょっと話をしてみたい気持ちもあった。
これが津田新一との出会いであった。