パラレルストーリー 1話(並木司)
駅員
「駆け込み乗車はおやめください」
聞きなれたアナウンス。
終電間近だか、今日は人が多い。
12月25日、クリスマスだ。
並木司(なみきつかさ)はいつものようにホームにいた。
事故が起こらないよう見張るのが彼の仕事だ。
しばらくすると大勢の人混みの中、顔色の悪い一人の男性がフラフラと歩いていた。
酔っ払ってはいないようだ。
すると突然、男性が倒れた。
「お、お客様大丈夫ですか?」
並木はすぐに駆けつけ声をかけたが応答がない。
「誰か! すぐに来てくれ!」
並木は救護室へ男性を運んだ。
男性の意識が戻らない。
並木は男性の所持品から家族の連絡先を調べた。
この男性は『津田新一(つだしんいち)』というらしい。
2時間後、彼は息を引き取った。
身内はいなかった。
45歳という短い人生であった。