パラレルストーリー 13話(永山祐)
学生のころから女には困ったことがない。
永山祐(ながやまゆう)は、気に入った女は必ず落としてきた。
この化粧品会社に入社したのも、キレイな女が多かったことが理由だった。
つい1ヶ月前にも同じ部署の女と付き合い始めた。
今日は新入社員の歓迎会だ。
永山にとってそれは新しい女を見つけるための会であった。
「では、今年も新入社員の歓迎会をはじめます! はじめに一人づつ自己紹介をしていきましょう! では、君から」
幹事が元気に場を仕切っていた。
新人が一人づつ自己紹介を始める。
つまらない。
今年はあまりキレイな女もいなく、永山は退屈していた。
「では次は伊藤さん」
次の新人が自己紹介を始める。
永山は目を奪われた。
恥ずかしそうに、それでいてぶりっ子というわけでもないその話し方は、女性にも嫌悪感を与えるわけでもなく、永山にとっては初めて見る女性だった。
今まで女を自分に振り向かせるためのゲームの一つとして考えていた永山は、初めて純粋に気になりはじめていた。
歓迎会が終わったとき、永山は彼女に話しかけようとした。
が、彼女は足早に帰ってしまった。
翌日、会社のメールから彼女のフルネームを確認した。
伊藤香織。
永山はその名前を深く心に刻んだ。