パラレルストーリー 14話(伊藤香織)
またこの通りに来てしまった。
ひと月前、コーヒーショップで新一を見てから、香織はよくこの通りに来てしまう。
かといって、仮に新一を見つけても聞くことはできないことは分かっていた。
あの女性は誰だったのだろう。
考えていると、交差点の反対側にこちらを見ている女性がいた。
香織はハッとした。
あの日、新一の向かいに座っていた女性だった。
信号が青に変わり、彼女はこちらに歩いてくる。
「伊藤香織さんよね?」
香織はなぜ彼女が自分の名前を知っているのか不思議だった。
「新一さんのことで話があるんだけど」
彼女は私と新一の関係を知っているのかしら。
香織は彼女に誘われるままあの日のコーヒーショップに入っていった。
二人は窓際の席に腰かけた。
「私、新一さんとお付き合いしてるの。だから彼と別れてくれる?」
彼女は突然頭が真っ白になった。
どういうこと?
栗山和美(くりやまかずみ)と名乗った彼女はその後も何か話をしてきたが、香織は何も思い出すことはできなかった。