パラレルストーリー 9話(加藤哲也)
問題が起きた。
中国企業との合同プロジェクトで、大赤字となったのだ。
システム開発は、プロジェクト開始前に金額を見積り取引企業と合意する。
今回のシステム開発にかかった費用がその見積りを大きく超えてしまった。
加藤は社長に呼び出され、子会社への出向を命じられた。いわゆる左遷である。
順調に出世街道を歩んできた加藤は泣き崩れた。
加藤の左遷後は、早坂が部長へ、津田が課長へ繰り上げ昇進することになった。
その日の月末、壮行会をかねて加藤は津田と2人で飲みにいった。
津田は泣いてくれた。人の気持ちの分かる優しいヤツだ。
「津田、あとは頼んだぞ」
津田はうなづいてくれた。
仕事のウデとしては、津田のことは心配していない。
唯一の心配は、部長の早坂との関係のことだ。
早坂は難しい男だ。
もう、俺がフォローすることはできない。
「津田、何かあったら俺に相談に来いよ」
加藤が津田と交わした会話は、これが最後になった。
津田の訃報を聞いたとき、加藤は責任を感じずにはいられなかった。