パラレルストーリー 10話(吉田勇樹)
布団から出ることができない。
仕事に行けなくなってから1ヶ月が過ぎた。
夜11時、吉田はなんとか起き上がり、カップラーメンを食べるため、お湯を沸かそうとした。
1ヶ月前、吉田は朝起きれなくなった。
翌日病院へ行くとうつ病と診断された。
吉田のプロジェクトでは、忙しい日々が1年以上続き仕事はどんどん忙しくなっていった。
お客から怒鳴られることも多かった。
すでに約1割の社員が病欠により退場していた。吉田も退場した。
吉田は病気のことを会社に告げると、早坂部長から怒鳴られた。
その時、退職も考えたが、津田課長から「君なら大丈夫、他のプロジェクトで力を発揮してくれ」と言われ、退職は踏みとどまった。
プロジェクトからはどんどん重要な人たちが病気で退場し、津田課長への負担が増しているという噂を聞いていた。
そんな中、自分が支えになれないのが悔しい。
吉田はカップラーメンを簡単に食べ、駅のホームで電車を待っていた。
深夜列車で実家に帰るのだ。
1人で家にいると気持ちがさらに塞いでしまう。
それに今日はクリスマス。
周りは幸せそうなカップルばかりだ。
2年前まではそんなカップルの中に吉田もいたが、仕事が忙しくなり彼女とも疎遠になって別れた。
2年前はこんなことになっているとは全く思わなかった。
「駆け込み乗車はおやめください」
アナウンスが流れ、吉田は電車に乗った。
実家までは電車で一本。特急のため、一度走り出したらしばらく電車は止まらない。
吉田はぼーっと向かいのホームを見た。
すると向かいのホームに津田課長がいた。
津田課長⁉︎
足元がふらついている。
こんな遅くまで…
吉田が思った瞬間、津田課長が倒れた。
⁉︎
それと同時に無情にも電車の扉が閉まった。
「津田課長っ」
津田課長に駅員が近づいて行く。
吉田は泣きながら見送るしかなかった。
翌日、同期から津田課長が亡くなったと聞いた。
吉田は仕事を頑張る気力がなくなり、その年、会社に退職願を出した。