フェネック通信

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パラレルストーリー 17話(伊藤香織)

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栗山と会ってから、香織はずっと悩んでいた。

新一からの電話にも出れなかった。

どう向き合えばいいのか分からなかったのだ。

 

1週間が経った。

 

見知らぬ番号からの着信だ。

いつもなら知らない番号には出ないのだが、落ち込んでいる香織はうっかり電話に出てしまった。

 

「香織? 久しぶり! 今度どっかご飯でも食べに行かない?」

 

男の声だった。

 

「誰?」

 

ぶっきらぼうに答えると、男は永山と名乗った。

香織の昔の記憶が蘇る。

 

「祐?」

「そう、永山祐だよ! どうしてるかなぁって思って電話しちゃったよ! 懐かしいなぁ」

 

昔と変わらず明るい声。

少し元気を分けてもらった気がした。

このままだと気が滅入っちゃう。

そう思った香織は久しぶりに永山とご飯に行くことにした。

 

1週間後、永山と久しぶりに会った香織はとても楽しい時間を過ごしていた。

新一との不安な気持ちをその時だけは忘れることができた。

 

帰り道、「俺とやり直さない?」と突然の告白。

 

「返事はすぐじゃなくていいから、もし良かったら連絡ちょうだい! 今日はすごく楽しかった! ありがとう!」

 

永山は帰っていった。

家に帰ってから香織は泣いていた。

新一に申し訳ない気持ちと、気持ちが楽になった自分に。

 

仕事で忙しいという新一とは、それから疎遠になった。

気持ちが落ち着いてきた香織は気持ちを整理し、永山に電話をかけた。

 

それから1年後である。

香織と永山の結婚式が開かれたのは。

 

新一とはそれ以来会っていない。

もちろん、新一が亡くなったことを香織は知ることもなかった。